遠くは「塩爺」近くは「のまねこ騒動」。どちらも遠い過去のような気がする。定期的にネタを投下しては再炎上させてくれる毎日低俗記事問題はともかく、ネットの騒ぎなんて長くて数ヶ月。本書は「諸君」でのこの1年間の連載を転載したものなので、現時点ではそう色褪せた感はないが、来年の今頃読んだら、「あのころは…」という印象になってしまうかなあ。
しかし、著者の主張には多くの点で違和感を感じた。「ブログ論壇が既存の言論に対抗する公共圏になる」という著者の論は果たしてそうか?著者はネット言論の主役をリアル社会で失敗している「ロストジェネレーション」と見るが、果たしてそうか?巻末で著者が紹介するたくさんのブログのうち、池田ノビーやら切込隊長、dankogaiほか専門職、研究職など多くはないが自分が知るブログの主の多くはリアル社会で成功した人たちだ。本当にいいブログも多いが、てめえの自慢をしながら、人を叩いて自分のアフィリエイトを上げることに熱心、というせこい手合いも少なくない…。自分の成功は棚に上げて社会やマスコミを批判する連中が「ロスジェネの声」だとはとても思えない。一瞬の竜巻は起こせても、持続的にリアル言論に対抗するなんて無理だ。
また、「小泉の郵政選挙勝利はマスメディアよりネットの言論が強いことを証明した」と著者は言うが、そりゃ、閉じたネット社会から見てたから、影響力が強いように感じただけでは。マスコミも野党より与党の表出量の方が断然多かったし、都市部の選挙戦を直に取材・分析した立場から言えば、主婦・高齢者などネット論壇のリーチが及ばない人の自民支持もいつにないほど高かった。
とまあ、ネット論壇への肩入れが強いが、ネットウォッチングの第一人者らしく、それなりの分析は読ませ、考えさせてくれる内容。この1年のネット社会のトピックを振り返るにはいい本だと思う。