ジャンルはロボットものという体裁だが、富野監督作品の例に漏れず時世を色濃く投影した人間ドラマ。
OP・EDに象徴されるように女性、母性愛、生命を問うた作品。
アンチボディは無機質な兵器ではなくより至近な生命体の様な存在として描かれ人間とのコミュニケーションがあり微笑ましい。(馬や犬の様な感じ)
両親は健在の勇と孤児の比瑪。然し幸せの在処は血の繋がりと比例しない。比瑪は沢山の親に愛され世界を愛している。
一方、勇が所属する組織オルファンは唯物的な思想で覆われ家族は個人が只点在するのみ。
愛に彷徨する子供達と年齢を重ねただけの子供達(親)の闘いは伊佐未という家とジョナサン親子の二軸を通して作品を貫く。
元々は同じ組織にいながら親を見限り良い仲間に巡り会えた勇。勇とは対照的に親子の業に引き摺られ先鋭化していく勇の姉・依衣子とジョナサン。
特に勇の母親の翠は女であり続け、娘さえ男を巡るライバルとして敵視且つ野望の為の道具として利用することしかしない。
それを関知せず自身の理想に埋没する父親。そして翠を叱るのが最終話と遅すぎる祖母と連鎖し、大人が大人としての責任を果たさないことで
生じる未来(子)への弊害が描かれる。(ジョナサンの母親アノーアは翠と異なり、失われた時間を埋める為に親としての狂気に走る)
オルファンという人智を超えた存在から姉を取り戻し勇は比瑪の元に帰って行く。比瑪とネリー・キム(ブレン)との邂逅、
そして主人公二人とトマト畑が重なるラストの描写は秀逸。希望と優しさに溢れているエンディングは富野作品のなかでも至高の出来だと思う。
音楽は菅野よう子ということもあり一層の相乗効果をもたらし作品全編を盛り上げる。
現時点の評価は有名監督のマイナーな佳作という感があるが、この作品を観た子供達が大人になった時に作品の質に伴う名声が与えられたら、と願っている。