「Badlands」、「Anthem to the Estranged」両名曲を生んだ3作目…と言うよりは、初代シンガー:デイヴィッド・ウェインが脱退、中心人物:カート・ヴァンダーフーフもバンドを離れ、絶体絶命のピンチに立たされた作品と言った方が正確か? アルバム・タイトルもそれを物語っている。もっとも、カートはツアーには同行しないものの、曲は提供し続けたため、問題はヴォーカルだけという事になる。
結論から言うと、新加入のマイク・ハウは無事、後任を務めてみせた。前任者ウェインは超高音で絶叫タイプだったが、ハウは噛み付くような歌い方ではあるものの、きちんとラインを追うタイプだ。音程コントロールは完璧だった前任者には少し及ばないが、十分なレベル。そして何よりルックスがいい。長身で甘いマスク。結果、女性ファンがにわかに増えるという、予想外の事態も生んだ。
さて、書き手が代わったため、歌詞の世界観にも変化が生じている。「暗黒の使徒」のイメージは消え、シリアスで社会問題をテーマにした詞が増えた。悪徳医師を唄った 1. や、タイタニック号沈没を唄った 2. などに、それが出ている。また、3〜4分だった曲長も、5〜7分と、やや壮大になっている。
そして本作の目玉は何と言っても 5. Badlands であろう。この名曲があったから、セールスが落ちなかったと言っても過言ではない。内容は砂漠をさまよう男の物語である。空にはコンドルが舞い、男が力尽きるのを待っている。「荒れ地が、また一つ命を奪おうとしている」「俺はこの悪しき地から必ず生還してみせる」と唄うラインがカッコイイ。無機質に上下する殺伐としたメロディーの描写力は完璧だ。
その1つ前の大作バラード(9分もある) 4. Anthem to the Estranged も 5. に劣らぬ名曲だ。カートはアコースティック・ギターを弾いても上手い。都市の路上で、行き倒れようとしている男。かつては絶頂の時代を過ごした彼も、今はやっとその日を過ごすだけ。ボトルを片手に彼は唄う。「ああ、またひとりぼっちだ。」
「俺は別に現実に絶望してる男じゃないんだけど、俺が作る作品には、いつも絶望がうろうろしてるな」とハウは苦笑気味に語っている。(4988014724920/WEA/25P2-2492)