本作に関してはもう多くを語るまでもない。メル・ギブソン監督・主演による真に紛う事無き大傑作である。近年のアカデミー賞の受賞作は様々な疑義が生じてしまうことが多いが、本作のアカデミー5部門受賞(ノミネートだけではなく受賞してしまっているからすごい)という結果には疑問を差し挟む余地は寸分もないであろう。
スコットランド史におけるレジェンダル・ヒーロー、ウィリアム・ウォレスの物語。伝説とも実在とも言われる彼だが近年の研究により実在した事は確かなようだ。しかし、実際に歴史に登場するのは1297年から1305年に過ぎず、その功績のあまりにも大きいことと、残っている資料が非常に乏しいことのギャップもあって様々な逸話が伝説化してしまっている。そうした歴史的事実と伝説的出来事に明らかなフィクションの要素をうまく配合し、リアルに肉付けしたことによって、迫力あるヒーロー像の描出と抑揚のあるストーリーテリングに本作は成功している。
ウォレスだけではない。後にスコットランドの独立を実現する若きブルース伯(自ら王位に就きたいがため史実においてもウォレスには非協力的であった。紆余曲折を経て、後にバノックバーンの戦いでイングランド軍を駆逐。)、ブリテン島全域の支配を目指すイングランド王エドワード1世(この当時の英王は仏ギュイエンヌ伯でもあり、フランス国内でも仏王の臣下として又は隣国の王としての二つの面を併せ持つ事で複雑な事情を抱えている)、初代"プリンス・オブ・ウェールズ"エドワード2世(1世の気性の荒さのみを受け継いでおり、繊細さに欠く政策でスコットランドを失う。後に妃イザベラにより失脚)、美しきプリンス・オブ・ウェールズ妃イザベラ(端麗王フィリップ4世の娘。後にエドワード2世を廃位させ息子3世の摂政となる)など魅力溢れる人物達が各々の複雑な情況の中で精一杯の選択をしており、それらを巧妙に絡ませることで立体的な厚みをもった物語となっている。
後のメル・ギブソン監督作品であるアポカリプトでも一部から批判されていたが、このブレイブハートも史実と異なる部分が多い。歴史考証的視点からは大きくずれた部分が目立つのは確かだ。だが、彼は残存する僅かな史実のみで語るよりも、フィクションを各所に取り入れることで現代人に理解しやすくストーリーを紡ぎ、スコットランド以外ではそれ程知られていなかったウィリアム・ウォレスという人物がスコットランド史のみならず、人間としてどれだけ重大な軌跡を残した英雄であったかを伝えることに成功している。歴史をみせるのではなく、人物が、そして人々が放ってきた輝きとでもいうべき大スペクタクルを鮮やかにみせてくれているのだ。
BDとしての出来も素晴らしい。
映像コーデックはMPEG4 AVCの高圧縮を見事に生かし、情報量の多い繊細な映像を獲得している。所々に15年前の映画であることを意識せざる得ない画質の乱れる箇所が存在するため、リファレンス・ディスクと呼ぶには一歩足りないのだが、期待以上に丁寧にHD画質化されていると感じる。5段階で4/5。
音声コーデックはDTS HDMA 5.1ch。文句なしの大迫力。DVDと比較するとその違いは一層明確になるのだが、音の残響が実にリアルに再現されており、鑑賞者を物語世界に没入させることに貢献している。やや繊細さに欠ける感もあるが、気にしないでいいレベル。5段階で4.5/5。
私は7年前に購入したDVD特別版からの買い替えなのだが、本作が好きなら買い直しても絶対に後悔しないだろう。もちろん本作を観ていない方もHD化のこの機会に是非観ていただきたい。秀逸な作品である。