悪性の癌の宣告を受けた高校の化学教師、ウォルター・ホワイトは身重の妻と障害を持つ息子の為に金を残そうと合成ドラッグの製造に手を出します。
彼のパートナーとなるのはかつての教え子で現在は覚醒剤の売人ジェス。
豊富な化学知識と技術に長けたウォルトの手で精製されたブツは極めて純度が高く莫大な「商品価値」を生むのですが
二人はやがて否応なく危険なストリートの駆け引きに巻き込まれて行くことに・・・。
バラエティ豊かなアメリカのTVドラマ界においても流石に本作はかなりの「異色作」。
これほどリスキーなお話でありながらもコメディタッチで「逃げ」を打つことなく「真っ向勝負」。
どう考えてみても楽しいお話になる筈もないのだが登場人物たちに強力な引力があって目が離せなくなってしまいます。
基本はどシリアスな人間ドラマなのだが、時にコメディ、またある時はサスペンス、はたまたクライムドラマと
まるでローラーコースターのように局面が変化してゆきます。
ところが恐ろしいことにいささかも破綻を感じさせません。
そのタッチはもしコーエン兄弟が連続TVドラマを作ったならおそらくこういう雰囲気の作品になるのではないかと思われるもの。
主演のブライアン・クランストンが本作で2年連続エミー賞を受賞したこともあって人気は依然として上昇中です。
本作の主要テーマはアメリカのシリアスドラマの全てが常にそうであるように「モラル」です。
良き家庭人であり善良な人物であるウォルトは止むに止まれぬ理由からドラッグビジネスに手を出すのですがその結果、予期せぬ事態が次々と発生。
その中で彼がどう行動し、どのような選択をするのか。彼の置かれている境遇が同情に値するだけに意外なほどサスペンスが身近に感じられます。
しかし最大の見どころは次々と降りかかる危機に直面するウォルトがそれまでの只の物静かな男からじわじわとタフでしたたかな本性を浮かび上がらせてゆく様。
自分とジェスを殺害し「商品」を奪おうとした売人や凶暴な大物ディーラーとの対峙シーンにみなぎる緊迫感やそれに続くショッキングな展開からは目を逸らせなくなってしまいます。
クランストン氏の演技は見る者を時に戦慄させるのですが、それでいて決して主人公への親近感を失わせない見事なバランス感覚とニュアンスを体現しており唸らされます。
決して気楽に観れる作品ではありませんが完成度は極めて高く、これぞ正に「大人のためのドラマ」。
本国ではまさかのシーズン3突入となっております。