ベルリンのユダヤ博物館や9.11同時多発テロ跡地の再建コンペで見事一等を勝ち取ったダニエル・リベスキンドの2004年に米国で発売されたある種自伝とも言える様な内容の翻訳書。(翻訳はコールハースのdelilious newyorkを担当した鈴木圭介さん)
ユダヤ博物館が建つまでの過程や9.11跡地再建コンペ案が選出されるまでの経緯を生き生きとした文体で綴っている。またコンペに伴う政治的、経済的な困難の描写は臨場感があり、自身のユダヤ人という出自を巡って述べられる見解は複雑さを内包している。
読み進めていくと、ダニエル・リベスキンドという人物は記憶、歴史という物に真正面に対峙し敬意を払う人物だという事を感じた。彼の建築を見た方なら、例えばユダヤ博物館の形態等は多数のヴォイドが挿入され、幾重にも屈折した導線、鈍い光を放つファサード等は、建築物の性質もあってか悲しみや怒りという感情を喚起させるが、それは表面的な形態操作ではなく、自身の深い思索から産み落とされた形態であるという事が本書を読むと納得出来た。
長年理論家(というよりは大学教授として思索を重ねてきたといった方が的を得ている気がする)として活動してきたという事もあって引用される思想家や建築家等は興味深く、さらには登場する政治家やジャーナリスト等はマンハッタンやベルリンの政治経済構造を垣間見せてくれて、建築周りの人で無くても楽しめるのでは!?
ハードカバーサイズだけど軽量紙を仕様しているのか!?重さもあまり気にならない。
ただ英語版はペーパーバックで2000円代..英語の読める方はそちらをどうぞ。