誰かに例えられるけど、誰にも似ていない。ありのままで、すごい。そんな魔法+魅力=魔力を具えた女性アーティストが、またひとり現われた。北海道稚内で生まれ高校卒業後に上京。作曲家・谷本新(あらた)と出会いストリートライブなどで才能に磨きをかけたシンガーソングライター、阿部芙蓉美のデビューアルバム。タイトルの「ブルーズ」は青の複数形でブルースとは関係なし。
まず、声。微妙なニュアンスまで表現できるウィスパーボイス。ささやくような歌声は純度の高い陶酔感と中毒性をもたらしてくれる。彼女、身長170センチで華奢なんだけど、その音楽には包容力がある。おしゃれで心地よい音楽を好む人、逆に人間くさい歌を聴きたい人、その両方を包みこむ音楽的キャパシティの広さがある。そのもとを成すのが「詩」。心の奥底に眠る感情のツボをピンポイントで突いてくるように、痛くて気持ちいい。そして、孤独を癒しながら、孤独に輪をかける。そんなアンビバレントな世界がクセになる。
コーラスが気持ちよすぎて気が遠くなりそうな『ドライフラワー』。切なさ濃縮100%のキラーチューン『群青』。「無常」という言葉に最果ての地・稚内の風景が見えてくる『太陽』。伸びやかなメロディが清々しく、希望と優しさにあふれたミディアムナンバー『開け放つ窓』。ポジティブな詩と曲調が背中をポンと押してくれる『さみしいときはどうしてる』。「たかが青春、されど青春」というサビが泣きたくなるほど切なくて温かい『青春と路地』…など全12曲すべてがイチオシ。
もうひとつ特筆すべきは、バックの演奏。おもに谷本新のアレンジによるバンドサウンドは、単独でも成り立つほどハイレベル。とくにギターはアコギ、エレキの別なくソロを弾いても伴奏に回っても並々ならぬセンスを感じる。透き通るほどソフトで繊細な歌声、心の奥をじわりと刺激する詩の世界、そしてハイレベルな伴奏が調和したアルバム。
素晴らしい!