1994年7月9日、大阪のザ・シンフォニーホールでのライヴ。この日、朝比奈は86歳の誕生日を迎えている。
録音にはやや問題がある。第1楽章〜第3楽章まで、トーンが弱い気がした。いや、それは当方の再生機の問題か? それよりも演奏にアラが散見される。ここまでは☆3つでもよいかと思った。
勿論、ところどころ“巨匠”朝比奈の面目躍如たる姿は観られるが、だいたいが初めは調子の出ない大フィルのこと。特に第1楽章はいまひとつだ。第2楽章の半ばから乗ってくるが、合奏の精度はどうなのか? アダージョは懐の深い、大河のような安心感とボートがひっくり返りそうな不安感が同居する。
フィナーレ冒頭はさすがだ。これだけ雄渾壮大な出だしはなかなか聴けない。途中、ややだれるところが無きにしも非ずだが、コーダの凄まじい気迫と長大なスケールを兼ね備えた圧倒的なカタルシスには脱帽。フォルティッシモは鳴り切っており、大フィルがバテていないことを見せ付ける。ここは☆5つ。
全体ではやや甘いが☆4つ。
このライヴより後年、朝比奈をシカゴ・フィルに招聘したヘンリー・フォーゲルなる当時の同フィル総裁がライナーを書いている。それによると、この演奏の2週間後の東京公演に接してその実力のほどに感銘を受けたことが、招聘のきっかけだったそうだ。
評者は80年代から90年代のライヴには何度も接したが、改めて映像で視聴するとアラも目に付くにしろ、ライヴでは圧倒的な感動を受けたことも少なくない。やはりブルックナー第8は特別な音楽だ。
朝比奈はやはり舞台の人なのだろう。それだけに、ライヴでも「あれっ?」という演奏にも遭遇したことは事実だが。6対4で「あれっ?」だったかな。それにブル8のフィナーレでは、80年代後半ですら大フィルはバテていたことを思い出す。大フィルともども(?)、朝比奈の大器晩成には全く驚かせられる。