2004年のライヴ録音である。CD1枚に収録しているが、もう1枚70分以上もリハーサル風景が収録してあり、興味のある方にはいいサービスでしょう。さて、アーノンクールのブルックナーです。
ニコラウス・アーノンクールという指揮者は現代の音楽演奏に一つの大きな潮流を作った人物で、特にその古典やバロックの演奏において現代オーケストラを用いてピリオド楽器的な奏法の再現を試みたり、あるいはピリオド楽器ならではの効果的奏法を案出したり、という発想は大きな成果となってきた。この成果はアーノンクールが全てではないけど、それにしたって、この人の存在感はめちゃくちゃにでかい。しかし、RCAと契約するやブルックナーに精力的に取り組んだのにはちょっと驚いた。なぜならそのような新しい表現法とブルックナーの音楽は、遠距離にある関係に思えたからである。しかも未完成の第9の終楽章の断片を演奏するなど、アーノンクール氏は相当なブルックナー・マニアであるようだ。そしてこのハース版を用いたウィーンフィルとの第5番も実にユニーク。
ブルックナーの音楽は元来、長いフレージングを持ったものだと思うが、アーノンクールの手法はブルックナーでも同じで、そのフレージングの拍を自分流に付け直す。あざとくても確信的にやってしまう。そしてオーケストラの音色もかなりアヤがあり、ねっぱるような部分があったり、ちょっとタイミングを広げたり様々なことをやってくる。そのような策はブルックナーとは相容れない、というのが一般的な意見だと思うけれども、その「前提」といったものを軽やかに踏み越えてこそアーノンクールである。第2楽章の木管のフレージングはほとんどイネガル奏法に近づいている。これは面白い。またフィナーレのコーダまで延々と加えられるアーノンクールならではの音造りも楽しい。しかもウィーンフィルの音色であり、聴いてみるとそれはそれで立派にブルックナー足りえていると思えてくる。「この天才にしてこの表現ありき」〜最後にはそう頷かされた。