この本はブルガリアの通史を取り扱った本です。特に興味深いのは共産
主義時代に省みられることのなかった初期共産主義や右翼政党、国王、オ
レンジ親衛隊、マケドニアとの関係等といったことにも言及してある点で
ある。
イギリス人の著者らしい、押さえた文章で淡々と書かれており、いささ
か単調と思われるが、どうしてなかなかぐっとひきつけてやまない文章で
ある。
特に近代史では、ロシアと西洋の間でブルガリアという国が引き裂かれ
ながら、翻弄されていくその歴史、政治、外交を見事に描ききっている。
そして”ファシスト国王”と呼ばれる第2世界大戦期のボリス3世について
も、彼自身の心情や考え方、あるいはその政策決断の変遷に至るまで簡潔
に書かれている。これ自体、共産主義時代にはまったく記述すらされてい
ないことであり、このようにある特定の歴史観に侵食されていない点から
もこの本の一読をお奨めできる所以である。
なお、現在ブルガリアの首相を勤めるシメオン氏はこのボリス3世の後に
即位した国王シメオンと同人物である。