ブルガリアの歴史を扱った日本語書籍としては、
ブルガリアの歴史 (ケンブリッジ版世界各国史)や、
ビザンツ帝国とブルガリアなどがありますが、各時代をまんべんなく扱った通史書籍としては本書が一番だと思います。3書を比べてみると、ケンブリッジ版は焦点が近代以降にあり、古代中世の記述は少なく、「ビザンツ帝国とブルガリア」は、国家成立以前の時代から第一次ブルガリア王国時代までがテーマなので、この時代については3書中もっとも詳細です。この2書の中間時代にあたる第二次ブルガリア王国からオスマン支配時代までの記述は、本書に求めることになります。
また、ブルガリアという国はあまり日本人に馴染みが無いことから、詳細ながブルガリア各州の紹介にあてられており(これが、書名の「風土」に相当する部分)、各州紹介中にも、その州の歴史や史跡が言及され、観光ガイドのような構成となっています。1981年の出版と、今から30年も前の出版であるにも関わらず、未だにこれを越える邦訳で読めるブルガリア通史の書籍は無いと言えるでしょう。また、著者達の用いた資料が、共産主義政権時代のブルガリア史学者の著書・論文を用いていながら、マルクス史観的な感じがまったくしない、普通の通史となっているのが驚きです(ブルガリア人民共和国時代は4ページしか無い)。
古代から第2次世界大戦まで、まんべんなく扱ったブルガリア通史概説としてお奨めです。敢えて言えば冒頭の各地写真が白黒なのが残念。