わずか200ページの小さな本です。こんな本が1970年代半ばに出ていたことには、うかつにも気がつきませんでした。今回の文庫化ではじめて知った次第でした。前半部分は1966年のウイーンを舞台にしているにもかかわらず、その中身と著者の視角や欧州の現実に対する著者の解釈は、驚くべきことに、時代の拘束を越えています。まったく古ぼけていないのです。あくまでもブリューゲルの絵を題材とはしていますが、この本をいまだに感動を呼び起こす作品たらしめているのは、その絵というよりは、著者の率直な生き様と、世界の替わることのない本質との対話です。専門家はどういうのかわかりませんが、もちろんブリューゲルの鑑賞本としても貴重な価値を持っているのはいうまでもありません。ぜひ”ウイーン愛憎”と比べて読んでみてください。