バルドー映画は偶然テレビでかかっているのをほんの一部見たきりですが(タイトルも覚えていません)、豊かなカーブの体型とビックリするくらいの姿勢の良さ(バレエで鍛えられた姿勢だったんですね)、そしてキビキビした美しい歩き方が印象に残っています。
「『正直』を達成出来るだけで何ものかである」というのはウィトゲンシュタインの言葉ですが、そのままこの本に進呈したいですね。凄まじく正直な女性です。好きなように、己の心の命じるままに書いています。誰かに好かれようという下心が全くない。PC的配慮もありません。その点ヴァディムの回想録とは全然違います。ヴァディム氏の本からは読み手に好印象を与えようという匂いがプンプンでしたから。
幾つになっても癇症で潔癖で恐ろしく賢い思春期の少女のような人のようです。だから人間が嫌いで、金にも権力にも興味がないんですね。俗物根性もありません。おそらく大変なロマンチストなのでしょう(金や権力にはロマンがないからなー)。だからどんな男性とも長くは続かない。生身の男は生身の人間ですから。時代が時代なら「神」のいる宗教に行きそうなものですが、動物愛護に情念が傾くのもなんとなく分かります。
大人のしょうもなさを憤っていた明敏な少女が世間と妥協せずにそのまま成長した記録、と申しましょうか。となると、最初に見た真っ直ぐに伸びた背筋と颯爽とした歩き姿のイメージのままということになります。
若い頃に共演したアラン・ドロンを「どうしようもないナルシスト」と鼻で笑うところなどおかしいです。マリリン・モンローと遭遇する場面は特に印象的。モンローは儚くて気の毒な女性だったという印象がありますが、バルドーは基本は裕福なブルジョワ家庭のお嬢様ですし、自尊心の強固な反抗児だったのですね。無事に気難しい女性として加齢出来て良かったですね。