ブラームスの3曲のヴァイオリン・ソナタのソロ・パートの書法は、どれも飾り気がなく線の太い、それでいて感性豊かな深い味わいを歌い上げるように書かれている。こうした伝統的なドイツの音楽において、シェリングの常套手段である楽曲に正面切って対峙する正攻法の解釈と曲想の彫りの深さ、またそれに適った全く隙のないボウイングは最大の効果をもたらす。この曲でも随所にみられる、彼の豊かで流れるようなダブル・ストップが聴き所のひとつで、ブラームスの厳格な楽曲の構成のなかにもロマン派特有の溢れんばかりのカンタービレを内包させている。更にルービンシュタインの、伴奏という言葉からはほど遠い、積極的で決然としたピアノの介入が、この曲集をシンフォニックな響きを持つ奥行きの深いものにしている。勿論両者の声部的なバランスが完璧に保たれているのは言うまでもないが、ピアノの雄弁さとスケールの大きさは圧倒的だ。そこにはアンサンブルの総ての要素が存在している。近年の同曲集の中には演奏家自身の生ぬるい幸福感が露呈されていることが多い中で、彼らの演奏は真に聴く側に幸福感をもたらすことができる稀有な例だ。