ブラームスのドイツ・レクイエムは説明不要の名曲です。
全7楽章、1時間以上かかる全曲を聴きとおすことは通常はあまりありませんが、時間のあるときは、スピーカーの前でしっかりと傾聴するに値する素晴らしい宗教曲です。個人的には最初に合唱団員として歌った宗教曲ですので思いいれもより深いものがあります。
またこのクレンペラー盤は、1961年の演奏ですが、半世紀経た現在でもこの演奏を第1に挙げたいと思うほどの優れた演奏です。LP時代に相当聞き倒したわけですが、その印象はCDになっても全く変わりません。
フィルハーモニア合唱団の迫力ある合唱は胸を打ち、クレンペラーの真摯な性格そのままのケレン味のない王道とも言える演奏でしょう。
中間部の第4楽章の美しい合唱を聴くに連れ、ゾクゾクとした感動が襲ってきます。またドイツ・レクイエムのクライマックスとも言える第6楽章のフーガの堂々たる構成と圧倒的な迫力。言葉がありません。合唱の迫力と引き換えにがなる傾向にあるのが現代の水準から見ると少し残念です。
バリトンのディートリッヒ・フィッシャー=ディースカゥは、この時36歳、とても上手いですし、若々しいストレートな表現が好みです。晩年はともすれば技巧に走りがちだったフィッシャー=ディースカゥですが、流石に20世紀随一と言われるバリトン歌手の全盛期の歌唱です。他の盤のソリストを圧倒する卓越した素晴らしい歌唱には、ただ拍手のみです。
ソプラノのエリザベート・シュワルツコップは伝説とも言えるドイツ・リートを専門としたソプラノで、収録時46歳、全盛期の透明な美声を披露しています。線は細いのですが、敬虔な趣は、内面の豊かさの現われでしょう。