今のところ翻訳されているマッカーシーの作品は他に5つあるけど、
1.すべての美しい馬、2.越境、3.平原の町、4.ザ・ロード、5.血と暴力の国
この作品はちょっと他の作品と毛色が違うところがあります
(評者は1、2、5を読んでます)
それは、
・文章が詩的
「越境」もそうでしたが、「越境」よりさらに詩的です
一つ一つのセンテンスが詩として独立してるような感じです
「血と暴力の国」など会話と独白が多いので通俗小説並みに読みやすかったですが、この本は話を追いづらいので読みづらく感じる人もいるでしょう
・残酷描写が他の作品よりきつい
マッカーシーの作品で何をいまさら、と思われるかもしれませんが、他の作品より強烈だと思います
インディアン戦争の時代が舞台ですから、描かれているのは個人の暴力を超えた虐殺です
・あと、これは言葉で表現しづらいんですが、この小説は作者の意欲作といった感じです
他のマッカーシーの作品と同じく世界の不条理さがテーマだと思うんですが、この作品には世界の不条理を体現したキャラクター「判事」がいます
他の作品では不条理は特定の形をとっていません 読者は世界の不条理に憤りや戸惑いを感じつつも、それをぶつける相手すらないわけです
(「血と暴力の国」のChigurhは判事に近い感じですが、判事ほど怪物じみていません Chigurhは不条理の構成要素の一部ですが、判事は不条理の神に仕える神官といった感じです 両者は似ていますが違います 映画「ノーカントリー」はChigurhの不条理の体現者としての性格を意図的に小説より強調したと思います)
もちろん現実には不条理を体現する人間などいません この陰惨な小説に対して変な表現ですが、憤りや戸惑いをぶつける相手の形があるだけ、この小説は「越境」や「血と暴力の国」より希望があるような気がします そこに作者のポジティブな意志を感じます
いずれにせよ一読の価値は十分すぎるほどある小説です
縁あってこのページにたどりついた方、ぜひどうぞ