私は、自分の頭で考える事を捨て、企業のためにバカになって働かせるような、修養団の研修や労務管理のあり方を批判しているが、佐川もそれに近い方式を導入している。
本書は、根性もののドラマで、「皆で優勝に向かって頑張ろう!」というような、今は見る事のない『スクールウォーズ』のような体育会系のドラマを見ている気分にさせた。
今でも企業は体育会系の学生を採りたがる。
上の言う事に批判を持たず、がむしゃらに体力続く限り馬車馬の如く働くし、不満を持つ社員から経営陣を守り、駆逐する役割を果たしているからで、そのコントロールも、闘う意思を持った社員と比べれば、格段に扱いやすい。
読後、人を動かす点で参考になる点はあるのか? これを採用した場合、社内は弱き者は去れ!的なクウキを生まないだろうか? とよく考えて欲しい。
前述の修養団研修を取り入れている大企業は、職場内に社員の親睦団体を装った監視機関を置き、思想調査や選挙での動員を行ってきた。
佐川でもそれは行われていないのかの問いに本書は答えないが、体力・精神的に突っ走っていけない社員は、厳しいノルマ管理の中で残ることは困難であろう。
佐川は、上場企業ではないため、財務内容など情報公開の必要性がなく、経営陣としては思い切った経営方針が取れる一方、チェック機能が働かない。
本書でも書いていないので、実態に近い所ところを調べたので書くと、賃金は以前のようにすぐに70万も 稼げるわけではなく、新人で総額34万ぐらい。
勤務時間は、大体一日13時間くらいだが、激務で、昼飯をゆっくり食う暇もなく、体はしんどいし、酷いことを言われるなどパワハラは日常茶飯事。
休日は、年間107日が守られている。
事故を起こせば、罰金制度があり、長期の免許停止では退社せざるを得ない。
厚生面(と言えるかどうか疑問だが)では、社員向け旅行会社があり、毎月賃金から数千円引かれ、定期的に会の一部負担で旅行に行くことになっている。
単なる旅行会社なので、同僚と行かずとも家族旅行などにも使えるが、半強制で複数のコースから好きなのを選んで予約せねばならず、一部が負担されるとはいえ、元の旅行代金自体が高額となっており、もしキャンセルするならそれは勿論自腹で、賃金からさっ引かれることとなる。
労務管理で言えば、創業者の清の時代は、人件費は収益の47%を基本とし(今は違うようだ)、「働かざる者食うべからず」だが、働く者には報酬を、との考えを実践していた。
そうであっても定着率は悪かったし、それは今でも変わっていまい。
過労や過酷な勤務状況(過労死認定ラインである月80時間を遙かに超える、月100〜200時間の残業)は、仙台で過労によるうつ病が原因で自殺したとして、母親が労災申請、仙台労基は不認定としたが、後に労働保険審査会は不認定を取り消し、労災を認める逆転の裁決をし(母親は、9,335万円の損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こしていて、いまだ係争中)、新潟でも係長の自死を、労基が過重労働が原因 の労働災害だったと認定(妻は、過労と部下の前で罵倒するなどのパワハラが自死の原因と訴えていたが、労基はパワハラの有無について言及せず)などとされ、新潟では自殺後、同店の従業員約250人のうち115人がこの上司のパワハラなどの内容を証言する署名を妻に寄せるほど公然と職場いじめは行われていた。
このような職場でも闘う社員はおり、労働組合結成も94年大阪、08年広島で行われ、どちらも週刊誌や新聞が取り上げたのだが、会社側による脱退強要などの組合潰しは苛烈で、広島の件では、中央労働委員会が佐川急便(本社・京都市)に対し、 労働組合との団体交渉に応じないのは不当労働行為にあたるとして、 速やかに団体交渉に応じるよう命令していたが、どちらも支店内での少人数での組合結成であったこともあり、組合員は脱退、幹部は退職している。
例示した都合の悪い部分に本書は触れていないが、このように上に立てば立つほど支配しやすい社風であれば、労務管理もくそもあるまい。
もし本書の多くが参考になるという読者がいるなら、あなたが経営者であっても歯車の一部でしかないことを知るためにも『蟹工船』の一読をお勧めする。
私の体育会系ゆえ、懐かしさを感じて☆1ヶはやめておいたが、評価としては、会社も本書も社会の生きにくさを助長しており、禄でもないと言い切っておく。