ブラック会社とか、流行のネタを持ち出して、上っ面の風刺をしてみせる社会派気取りの映画なんだろう、と思っていましたが、違いました。
もっと質の悪いものでした。
未見の方は勘違いしない方がいいと思いますが、これはいわゆる"ブラック会社"なる環境を、ある意味で肯定する映画です。
劣悪な仕事の環境においても、とにかくガムシャラに頑張ればつかめるものがある、何故ならそれが仕事というものだから、というのが、この映画の基本のメッセージのようです。
確かに感動させられるところはありました。
主人公を演じる小池徹平が素晴らしく、一人の若者が厳しい現実に巻き込まれながら、自分を見つめ、迷いながらも、時に周囲の人の助けを受けて切り抜け、最後には職場全体を前向きな流れに巻き込んでみせる様を、この役は彼以外には考えられないと思わせるほどに好演していました。
ただそれは、主人公の一生懸命な姿、自信のなさや過去の悲しみを抱えながらも懸命に生きようともがく姿が感動的なのであって、それ以外の何物でもない。
それは、若い人が意志を持って逆境に立ち向かうときには、いつでも、どんな場面でも生まれうるものだとは思いますが、それに何も意味を見出さず、押しつぶしてしまうのが、おそらく現実の"ブラック"な労働環境なのだと思います。
映画の後半、とうとう限界に来た主人公が溜め込んできた思いを叫ぶ感動的なシーンがありますが、おそらく本当のブラック会社では、ここから何も生まれることはないです。
主人公の叫びは虚しく空気を震わせるだけで、人間的な感情を奪われるほどに疲弊した同僚たちは、反応することもできずに、ただ目の前の仕事をこなしていくだけ。
現実はもっと冷たいです。
そしてそれは当然、何かが狂っている、否定すべきもののはずです。
この映画には"ブラック"な環境自体に対する批判的なメッセージが何も感じられず、そこに初めから違和感があったのですが、監督のインタビューを見て、ああ、何もわかってないんだ、というのがよくわかりました。
ブラックかどうかは「人間関係」によって左右されるもので、それにはまず自分を変えなければならない、と・・・。
そういうレベルの問題ではないというのが、わかっていない。
結局のところ、システム下請け会社の現場の惨状を材料に、映画の制作の手練がお仕事としてきっちり感動作に作り上げた、本質をえぐっていないニセモノの映画だと思います。