上巻から読んでいると、自画自賛、他者批判ばかりで、さらに文章も、途切れ途切れで、素人に対しては説明も不十分。とてものめり込めるような代物ではない。読書を楽しむという点からすると、あまりお勧め出来ない本だ。しかし、この本で指摘されていることは、非常に本質的で、極めて重要である。著者は金融の世界の人で、金融業界に本質的欠陥があることは、リーマンショック以降の金融危機で誰の目にも明らかになった。しかし、著者も指摘しているように、永らく慣れ親しんだ間違った理論から離れるのは実際には難しいようだ。さらに悪いことに、情報システムが蔓延している今、同様な数学のテクニックは、金融以外の様々な分野にも波及しようとしている。もちろん、著者が批判しているベルカーブを使ったテクニックが適用可能な分野も多いし、そうした場面に使われるのは良い。しかし、これらの数学は、ソフトウェア内に内包され、その本質的な限界性も理解しない人たちが、不適切なデータに対して、コンピュータでマウスとクリックして適用し、不適切な結果を出してしまおうとしている。つまり、今、世界は、著者の批判している悪い方の黒い白鳥によりさらされようとしているのだ。
より読みやすく、人々を夢中にさせてくれる類書が出ると良いのだが、とにかく読みにくいから、やや著者の態度に腹が立つからと途中で辞めず、手に取ったからには最後まで読み終わって欲しい。