「せーんせ、でんわ、でんわなってゆよ。」
まさか出崎統の遺作をこんなに早くに見ることになるとは思わなかった。彼のライフワークは日本のアニメーションの歴史であり、その作品はいつも「出崎統」であった。
1993年開始の秋田書店発売のOVAより数え早20年余。足かけ10年に亘りカルテ10話と劇場版1本が出崎統の手によって演出された。手塚先生の原作を底本としながらも、出崎統の手によりフィルム化されたブラックジャックは彼の持ち味とキャラクター、作品の世界観が相性がよく、様々な作品に挑戦を続けた彼には描き続けていきたいキャラクターだったように思う。
以前、DVDのインタビューの中で機会があればブラックジャックの続編を継続したいと願っていたと記憶している。諸般の事情で中断していたが今回最終エピソードとしてカルテ11、カルテ12として制作の運びとなった。
カルテ11 <おとずれた想い出>
ピノコ出生の秘密 悲しい絆で結ばれた双子の運命ー
ピノコが突然異変に襲われる。激しい痛みを伴う発作だ。だが、検査では何の異常も見られなかった。
そんな時、BJの元に手術の依頼が舞い込む。ビノコの容態を気にし、断るBJだったが、患者の名前を聞いて愕然とする。西園寺ゆりえ。かつてBJが手術を施したその女性は、ピノコと関わりのある特別な患者だったのだ…。蘇るピノコとの出逢い。BJは、ピノコを救うため、伝統ある舞の宗家家元、ゆりえを訪ねるのだが…
カルテ12 <美しき報復者>
揺れ動く独裁国家、絡み合う思惑…BJが見た時代の渦とは!?
飛行機内で急病人の救命措置を頼まれ、仁川空港に降り立ったBJ。しかし、そのまま安遼国に拉致されてしまう。国家主席チェ・ヒョクに治療を強要されるも拒否するが、病に苦しむその姿を見て、手術を引き受ける。病名はグリオーマ。チェ・ヒョクはアナフィラキシーのため、麻酔が使えない体であった。同時に国は大きく揺れ動いていた。BJは、警護についた謎の美女Lとともに、時代の渦に巻き込まれていく…
特典として収録されるディスクに本編のアフレコライブ放送の模様を収録。
人に名前を尋ねられたら、旅人と・・。世界を駆け巡る孤高の天才外科医のドラマ完結編。
そして、いっていいだろう。天才、出崎統の最終作品。ジョー、オスカル、ガンバ、ひろみ、コプラ、パガボンのパパそして、シルバー、ブラック・ジャック。
鉄腕アトム創生の頃より、40年以上現役で走り続けてきた出崎統。国内で手掛けた作品群の鮮烈な印象。アメリカへ合作のため渡米。当時日本のアニメーションの技術を伝えたかったと語っていた彼。その後帰国して取り組んだOVA、映画、テレビシリーズ。批判を受けながらも挑戦した萌え系作品への挑戦。マイティー・オーボッツを手掛ける時も、萌え系作品を撮る時も、ゴルゴ13で黎明期のコンピューター映像に取り組んだ時も、家なき子で立体アニメに取り組んだ時も、あしたのジョー2で初の続編に取り組んだ時も、出崎統は挑戦者だったと思う。
最後に手掛けた作品がブラックジャックだったことは、残念だけどファンの末席にいる私としては嬉しい。
そして淋しい。