レクター博士シリーズで知られるトマス・ハリスの処女作にして大ベストセラーとなった
1975年発刊の作品。ハリスは寡作で知られ、現在まで全五作品しか上梓していない。
うち四作がレクター博士ものであるが、すべての作品が映画化されてるとはいえ、よく
これだけで食っていけるものだと思う。日本の作家からすればうらやましい限りだろう。
本作は出版の二年後に映画化され、日本での上映が予定されていたが、脅迫により
上映中止になっている。そのため長らく幻の映画とされてきたが、今年から上映される
予定だ。脅迫にあっさり屈した理由については、時代背景を理解する必要がある。筋
書きは「商品の説明」にある通りで、大量殺戮テロの企てとの死闘が描かれてる作品
だが、そのリアリティは現在と違う。1975年といえば、日本赤軍の暗闘やパレスチナ・
ゲリラによるテロが横行していた時期で、ミュンヘン五輪選手村襲撃事件の三年後だ。
脅迫に真実味があったのである。選手村襲撃事件実行犯の『黒い九月』が本作品に
おけるテロの立案者で、背後にはリビアのカダフィ大佐がいるという設定。彼もいよい
よヤバそうだが(笑)。狂気の元海軍将校ランダーと復讐に燃えるダーリアらのテログ
ループと、モサドのカバコフとの死闘の凄まじさに息をつくことができない傑作である。