だいぶ手垢がついた言葉だがBRICsと呼ばれる国のうち、ブラジルだけを取り上げた本は余りない。中国なんて新書だけでも毎月何冊も出る状況にもかかわらずだ。ほかの南米諸国と違い、ブラジルはスペイン領ではなくポルトガル領だった。支配被支配がはっきりしていたスペイン人と違い、ポルトガル人は先住民、黒人と同化し、人種間のいがみ合いが少ない。人種のるつぼで形成されたブラジル人は熱狂とサウダージが同居し、ゆったりした優しさをもつようになった。そんなブラジル人たちがハイパーインフレも軍政も乗り切り、今世紀に入りブラジルは急成長を始めた。そんなブラジル人を本書では67のQ&Aから解き明かす。
高金利が続く理由、資源開発力の高さ、核兵器放棄の理由も興味深く読めるが、やはり面白いのは「ブラジル人」っぽさを書いた節。ブラジル人がサッカーに厳しいのは「みんなプロ崩れで、いつでもサッカー選手がしっかりやらないならいつでも俺が代わるぞ」と思って見ているから、というのは笑ってしまう。セレソンも必死になるわけだ。ほかにもシュラスコや激甘コーヒー、フェジョアーダがブラジル料理の看板になった理由から、経済やブラジル人の歴史を語るのもいい。
余り紹介されていなかったブラジルの汲みせど尽きぬ魅力を、その心性に寄り添うような明るく軽妙な筆致でよく描いている。Q&Aというかコラムですべて構成されているので、著者が言うように経済、政治、生活やサッカーなど、関心のあるところからでも気楽に読める。サウダージ、カリオカって言葉になんか気だるい郷愁を感じていたが、読んでみて人口、面積だけではないブラジルの大きさ、深みを感じさせられた。