聖人を描くのは、心理的にはかなりの負担があり、難しいものです。
『ブッダ』は、大胆不敵とも思えるアレンジを施して、漫画というメディアの特長を生かしきった大傑作で
す。
特に素晴らしいのは、読み手もブッダと共に「生命」について一緒に学んでゆく点です。
恐れ多いことが、漫画というメディアでは実にスムースに入ってきます。
人は何故生まれ、死んでゆくのか。何のために生きるのか。争いはなぜ生まれるのか。
『火の鳥』と同じテーマで物語は進んでゆきます。
手塚先生は、「ブッダ」を仏典とは異なる大幅なキャラ変更を行っています。
アッサジは、ブッダの弟子ですが、『三つ目がとおる』の写楽保介が扮して登場します。
洟垂れ小僧で、猟師の親が弓につけて押し付けてきた厄介者です。
いわゆる手塚先生のスターシステムによる配役です。
こういう表現は、漫画の神様にしか為しえないと思うのです。
ブッダ、その人に繋がりがなければ、これ程のアレンジが加えられたのではないかと。
出家して最初に出会う修行僧、デーパ。
シッダルタの因縁浅からず、オオカミに育てられた、ダイバダッタ。
この巻では、特にダイバダッタの悲劇の運命が描かれています。