手塚治虫氏は大好きな作家ですが、彼の作品の中でも特に好きなのがこの『ブッダ』です。今回は、文庫版として出ている潮ビジュアル文庫で12巻読みました。
この文庫版の帯には「ごらん世界は美しい…」というセリフが載っています。最初は「すごいきれいなセリフだな」と思っていましたが、読み進めるうちに、もしかしたら、この言葉をこの帯に載せているのは、この作品の素晴らしい要約なのかもしれないと思いました。
ここに出てくるブッダは、悟りきった聖人ブッダではありません。この作品の最初では、彼は史実通りシッダルタとして登場します。そして、そのシッダルタが王族としての生活に迷いを抱き、出家し、そして悩み、悟りを開き、自分の教えを広める中でまた悩み、最後涅槃に入るまでが描かれています。
ここに出てくるのは紛れもなく、われわれと同じ「人間」であるブッダです。そして、そのブッダの周りにも善悪様々、とても魅力的な人間が登場します。彼らは、時にはブッダを誘惑し、時にはブッダを貶めようとし、ついにはブッダに心を許し、心を開いていく。漫画とはいえ、そこには本当に泥臭い、人間の悲喜こもごも全てが存在します。
そして、そのストーリーを通じて感じたのは、人間の持つ根の美しさ。世界の、宇宙の中の一部分でしかない人間の持つ、本当の美しさを、ブッダの一生を通して見事に描き切った作品だと感じました。
特定の宗教を信じる人間ではありませんが、この作品はとてもオススメです。手塚治虫が好きな人も、あまり良く読んだことがない人も、ぜひ読んでみて下さい。