昨今の電子書籍の議論によって、欠落している視点が二点あるのではないかと思う。一つは、書き手の視点による議論が少ないということ、もう一つは、ブログをはじめとするネットメディアからの視点で考える議論が少ないということだ。
本書はジャーナリスト、起業家から、図書館関係、弁護士にいたるまで、読者とは反対側の視点において”本のこれから”について語られた一冊。変革に対する姿勢が非常にポジティブであり、津田大介氏、橋本大也氏らによって提示される”本の未来”は、本の送り手側にとっての大きな可能性を示唆している。
・編集の縦軸と横軸の広がり
本を送り届ける側にとって、紙の本ありきで物事を考える必要がないというのは、非常にポテンシャルを大きくしてくれる。送り届ける読者の形を土台から考えることによる負荷は大きくなるかもしれないが、選択肢が増えることによる編集の横軸の広がりは表現の多様性を引き出すことになるだろう。また、送り手側でのパッケージをどこまで行い、読者の参加感をどのようにデザインするかという、編集の縦軸の広がりも、新しい世界観をもたらしてくれる。
・溶けていく境界線
電子書籍を、紙の本とネット・コンテンツの中間に位置付けて考えてみる。電子書籍の登場による影響は、紙の本とは反対サイドにいるネット・コンテンツも同程度のインパクトを受けることであろう。例えば”体系化されたストック情報”のポジションに電子書籍が位置どることになると、隣接するネットメディア、ブログメディアはよりリアルタイム感のあるフロー情報に特化していき、TwitterやFacebookとの境界線があいまいになっていくかもしれない。また、短文の電子書籍、長文の有料メルマガなど定義をあいまいにする表現物の登場も予想される。そして電子書籍の登場は、その誰にとっても出版することへの敷居を今までより格段に低いものにしてくれるのだ。
今後想定される、本の送り手数の増加というものを考慮すると、送り手側の視点こそが、今後の電子書籍の命運を握るのではないかと思う。