シコ・ブアルキはボサノバに関心のある人なら,知る人ぞ知るボサノバ歌手であり,ブラジルの知識人。その彼が書いたノベルというので,読み始めたらこれがなんともボサノバ的混沌をうまく表現した作品に仕上がっています。彼の長年の世界的な演奏活動等の経験からくるハンガリーやブラジルの様子は海外で生活した経験のあるものが味わう異邦人の感覚を実に素直に,それでいて言葉を人間をこんなに突き詰めて描いた作品はないというふうに言わしめる面白さです。シコのメッセージ性の強い歌に似た作品の性格は不思議な二重生活の主人公という設定にはぴったりです。この本を読んで彼の音楽に入っていくのもいい。ぜひ朝いっぱいのカフェのつもりで飲んでみてほしいですね。