白血病による死期迫った1950年9月16日、妻や主治医に見守られながら開催された
33歳にして人生最後の演奏会・・・『ブザンソン告別演奏会』
モノラルで音は良くないのですが、これほど“生と死・音楽”について考えさせられる
リアルな音楽のドラマは他に類を見ません。
グルダのシューベルト:4つの即興曲集やホロヴィッツのザ・ラスト・レコーディング、
バックハウスの最後の演奏会やネイガウスの有名な最後のリサイタルなど、
死の直前の(ライヴ)名録音が数ある中で、その若さ故か、最も胸息詰まる演奏でもあります。
バックハウス盤もそうでしたが、聴衆の拍手や演奏直前の“指馴らし”までもが収録されており、
迫真に迫った演奏が始まるという期待感が膨らむ中、悲壮感とは無縁な堂々たる演奏が始まります。
このCDのタイトルを知らないで聴くと、リパッティの死の兆しを感じ取ることは不可能でしょう。
シューベルトの2つの即興曲、それに続くワルツにしても、
軽快で力強い指さばきから奏でられる“男リパッティ”の薫りが強烈で、
モノラルのハンディキャップを見事に払いのけています。
この日は、作品34-1変イ長調“華麗なる円舞曲”のみ演奏されていませんが、
さらに音が悪いスタジオ盤よりも、こちらを彼のワルツ全集としても良いかもしれません。
このCDではバッハの“主よ人の望みの喜びよ”がカットされているのは残念です。