本の帯に「新境地」と言う言葉が冠されていますが、実際、今までの作者の作風からすると「おや!」と思わせるものがあります。
舞台は、すでにイタリア・ドイツが降伏してしまい、日本の降伏も時間の問題となった戦争末期です。
そこで起こるドイツ人艦長の謎の「死」。
この「死」の奥に隠された巨大な「謎」が、次第次第に明らかになってきます。
作品全体は「ミステリー」として書かれています。
その舞台となっているのは終戦前後の日本ですが、そこにはドイツ、そして進駐軍としてのアメリカがあり、スパイを暗躍させるソ連の影もあります。
関連が良く解らない事件が続きます。
そして、その裏には「国家」或いは「民族」の問題があります。
作者はそうした大きな権力の動きに、「男」と「女」と言う視点を与えます。
「純血」と「混血」の問題に対する捉え方の差は、本来持っているジェンダーの差そのものからきていると考えます。
更には、「男は権力に生き、女は愛に生きる」と言うテーゼも提出し、そこに戦争を経由した「男」と「女」の差を捉えようとしています。
後半、物語としてはやや安易に走った感はありますが、逆に言えば、その分作者独自の考え方が強く表面に出てきている部分でもあると思います。
冒頭でその作風の違いにちょっと驚かされましたが、読み終わってみれば、やはり作者の世界だったと言う気がしました。