この本の評価ほど迷うものはない。
まったく惜しいというしかない。
戦後日本の歌謡史にとって、空前絶後の地位を占める笠置シズ子さんの業績を、一冊にまとめて描いた点で、特筆に価する。私は、笠置さんに最大の敬意を抱いている。だから欠点をつけることに強く自責する。
笠置さんに★★★★★、著者に★★★、編集者には★だ!平均★★★★とつけたのは、笠置さんに対する敬意からだ。
本のまとめがひどすぎる。編集されていないといっていい。
時系列をまったく無視。取材で得た挿話を、思いついた順番で羅列しているだけ。突撃精神だけは良しとしたいが、筆者には、取材したことを自分なりに考え、構成して読者に示すという、編集して構成する能力に欠けているとしか思えない。筆者に欠けている場合は、出版社の編集者が補完すべきなのではないのか。
筆者が執筆の動機としても述べているが、偉大な笠置さんの業績をまとめて本にしたものが意外なほど乏しい。それは事実だ。戦後を駆け抜けた彼女と服部良一さんとの時間が、まともに記録されないまま、今に至っているのだ。その穴を埋める一冊として、本書が貴重な点は、揺るがない。
熱烈な好奇心に駆られて、取材した筆者の行動力は買いたい。でも、八つ当たり気味に、本書の欠格の責任を求めるとするなら、それは編集に介在できなかった、出版社の編集者にこそ責任がある。
こんな形で本になってしまうなんて!あまりにも無念だ。電子書籍時代に「出版社なんていらない。著者が直接売ればいい」なんて、ことにならないよう、この本の編集者には、「極めて説明しにくい事件を、膨大な資料と聞き取りをした上で見事にまとめた」優れた構成力があるこの本「
蟻の兵隊―日本兵2600人山西省残留の真相 (新潮文庫)」を熟読して、次はがんばってください!