前半~中盤は20年ぶりに帰郷した女性カルメン(かってあった軍の虐待により肉体的接触を男性ともてない精神状態に未だにある)がガエル扮するグスタボを金で買う。それも一風変わった声だけの一夜。カルメンとグスタボの間には物理的な壁があり、その向こう側でグスタボが官能的な小説を朗読して聞かせる日々・・。倒錯した愛の形というよりは、壁一枚に隔てられ次第に惹かれていくにも関わらず壁の向こう側に手を差し伸べ握り合う勇気が持てない悲しくじれったいような愛。
しかし、やがては壁は若者によって取り払われる。皮肉なコトにそこから悲劇の幕開けなのだが。何隔てる事無く結ばれた二人の間には許されない「と、ある秘密」がある。それに気が付いた二人は・・
セリシア・ロスは日本ではあまり知られていない女優さんだけど海外ではかなりのベテランのはずです、流石に過去への苦しみ・女としての情念・そして哀しみ、表情一つで痛い程伝わってくる。ガエルの愛に餓え、愛に向こう見ず、であるが故に苦しみを抱え込んだ時のあの演技はどうだろうか、自分の持ち味を本当によく分かっている俳優だ。二人には感心するばかり。
ラスト、見る者はどうしていいか分からないやりきれなさを抱えながら僅かな希望を残したその幕切れを見るだろう。軍事政権化にあったであろうと想像される悲劇・・それを知りながらも愛の形を新たにして二人には生きていって欲しいものだ。
アルゼンチン史、また一つ知らねばならない事が映画のお陰で増えた。