内容紹介
僕がはじめてディナの音楽に触れたとき、かつて僕が出会ったどの音楽とも少し違うその個性的なサウンドに軽い衝撃を受けたことを思い出します。彼女とは同じ大学で教えていることもあり、キャンパス内でその姿は何度も見かけていました。ニューヨーク出身のいわゆる黒人ジャズシンガー――今となっては彼女にそういうカテゴライズはふさわしくないとわかりますが、その外見と、事前にもらっていた情報から、実に安直な先入観に支配されていました。しかし彼女の音楽世界は、その先入観を見事にぶちこわしてくれるような、新鮮な驚きに溢れていました。そういう意味では逆に僕自身が、ベーシストとして彼女の音楽をサポートすることになって、それまでとはかなり違うセンサーが必要になりました。それもそのはずで、彼女のバックグラウンドやキャリアは僕の知るジャズシンガーとはあまりに違いすぎていましたし、彼女の要求することが僕の経験や知識の中にないこともあったからです。彼女の音楽は、もちろんジャズをベースとしていることは間違いありませんが、それ以外にも、もうひとつの重要な要素といえるクラシック音楽や、ルーツともいえるラテン音楽、フォークミュージック等々、さまざまなな音楽的要素が心地よいバランスでブレンドされ、しかも圧倒的なオリジナリティーをもって熟成されています。このアルバムでは、そういった彼女の音楽世界が存分に表現されていると思います。手前味噌ではありますが、道下和彦のプロデュースをはじめ、彼女をサポートする日本人ミュージシャンたちの好演も一役買っていると思います。また今回このアルバムを手にしてはじめて彼女の書く歌詞を詳しく知ることができたのですが、また違った彼女の世界の奥深さを発見したような気がします。ということで、このアルバムが一人でも多くの日本の音楽ファンの耳に届き、僕が感じたのと同じような、新鮮な驚きと発見に出会ってもらえればと願って止みません。 (ライナーノーツより)