アメリカの食肉産業の内部をガラス張りにした作品。身動きもできないほど狭い糞まみれの牛舎で本来食べるべきでないとうろもこしを食べさせられ病気になると抗生物質を投与され、不衛生のためにサルモネラ菌が発生すれば肉塊をアンモニアで洗浄する食肉工場は、もはや人には見せられないほど想像を超えた嫌悪すべき場所になりはててしまった。
そこで働く人々は何百キロも遠くから連れてこられたなんの権利も持たない移民たち。つりさげられた豚が落下しその衝撃で病院に行って流産を告げられた女性のラインワーカーに対して会社がしたことは、無断欠勤による解雇。
都会の高層ビルで優雅に働くホワイトカラー達には肉を出荷するブラックボックスをいかに低コストで運営するかということ意外考える余地はない。
このドキュメンタリーを見て目が覚めた人は是非「ありあまるごちそう」、「キングコーン」も見てもらいたいが、この「フードインク」で一番印象だったのは、自然な畜産をやって成功しているJOEL SALADIN氏が運営する家畜農場 POLYFACE FARMだ。彼の仕事と言葉を聞くと、すすむべき道が見えてくるような気がした。
彼の主張は、自然のまま育てるのが一番低コストだということ。別の国から石油を使って飼料を運ばなくても、土地には草が生えるし、糞は土と交じり合って肥料となる。確かに肉だけで比べれば食肉工場には太刀打ちできないけれども、飼料のコーンには多大な助成金が使われており、国民の多くは糖尿病になりO157などのいままでなかったような細菌で病気が増え、自然環境の破壊などのトータルのコストで考えればPOLYFACE FARMなどのオーガニック農園のほうが持続性があるに違いない。なによりも見ていて美しく労働者は幸せそうだ。それが人類にとって一番大事なのではないか。
JOEL氏がもう一つ語ることは、人間性だ。家畜をモノのように扱うことは、労働者をモノのように扱うことにつながり、しいては人間同士の精神性にまで影響する。これは特に今、巨大企業で働く人間にとっては耳の痛い話だ。給料の安い国の人間に仕事を回し、使えない社員はさっさと辞めてもらう。人間がどんな気持ちになろうが企業の利益に関係ないのであれば知ったことではない。
この作品を世界中の人たちが見て、みんなが普通の仕事をして普通に幸せになれることを願いたい。