誠実且つ柔らかい語り口で、読みやすい本であるにもかかわらず、実は、大きなものに
対して単身戦いを挑んでいる本です。
「食の不安」は、本書のように科学と健全な常識を背景とした知識啓蒙によって解決し
ていくしかないのだと思います。
しかし、これまで、食品化学・農学の科学者からのアプローチは、エセ科学を批判する
ことが何ら科学者の学術的評価を高めるものでないことから、これまでほとんど放棄さ
れてきました。ご自分の研究には熱心でも、おかしな理屈で社会が混乱していることを
正そうという姿勢で、学術的な常識や科学的判断を公に発信しようとされる学者はほと
んど見当たりませんでした。科学者の立場から、食の不安や健康効果に関する扇動を、
冷静な目で分析し、公に向けて情報発信して下さっている方は、今も極めて少数です。
そんな中での著者の孤軍奮闘ともいえる言論活動に大きな期待と尊敬を持って、本書を
読みました。
最終頁、巻末の言葉は、極めて重いものでした。
著者の活動を契機に、食品にかかわる学界が社会との関わりに積極的になっていって頂
ければ、社会不安を取り除く意味で大きな貢献となるはずです。食品化学・栄養学が真
に社会に貢献する学問へと進むステップとなるよう、著者の活動をこれからも敬意をも
って見つめ続けたいと思います。
近刊では「メディアバイアス」(松永和紀著)と共にお薦めします。