高橋悠治の1970年代の活動に興味を持っている人や、もう既に悠治さんファンって方には、趣の深いアルバムでしょう。
そういう方には★★★★★で大推薦盤です。
もう他の演奏でフーガの技法を聴き込んでて、ちょっと変わった演奏も聴きたいな…て方には、★★★くらいで推薦します。
それ以外の方には、オススメしません。
大バッハの「遺作」の『フーガの技法』を、今まで聴いたことないから聴いてみたいなって方は、
まず、レオンハルトのチェンバロ演奏をお勧めします。
「絶筆神話」のある未完成フーガが入った演奏の方が良ければ、コチシュのピアノ演奏、リュプザムのオルガン演奏が良いでしょう。
「モーグやEMSを使ってる」というと、EL&Pやピンク・フロイド、冨田勲の音楽を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、本CDに収録されている音楽は、そんな雄大な音色の絵巻じゃあありません。
勿論、音楽の構造自体は雄大ではある。
音色に依存しないタイプの楽曲ですからね。
プツプツ、ふにゃふにゃ、ぴょ〜ん↑、ぐゎんぐゎ〜ん、ニャーにゃ→ん、とか言ってるような音色で声部を描き分けています。
ごくまれに、効果音風のフレーズやエコーも入ります。
チープなアニメで宇宙人とかUFOと交信してるシーンのBGMにピッタリかもしれません。
とはいえ、ウェーベルンの6声リチェルカーレ(〜音楽の捧げ物から)のように、
旋律線を敢えて無視なんてことはしてないので、曲自体の構造はかなり分かり易いです。
未完フーガの中断後には、楽譜に記されたC.P.E.バッハの例の言葉が響いて終了♪
高橋悠治ファンは、聴き終えてニンマリして下さいませ。
なお、高橋悠治は『フーガの技法』を1988年にも録音していますが、そちらはスタインウェイを用いて、
ベリリン自筆譜の中の初期稿(1740初頭に成立/未完フーガは含まれていない)を弾いた演奏です。