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ところが、その発展形としての、「一夫一婦制への規制緩和」とかいう話になってくると、やや雲行きが怪しくなってきます。これは要するに、「終身結婚制」の崩壊によって生じた「恋愛レスリスク」や「育児リスク」を、「恋愛市場」や「育児市場」の自由化によって低下させよう、みたいな話なのですが、育児市場はともかく、恋愛市場は労働市場とは決定的に違う点があるのではないでしょうか。
つまり、現代のような分業社会では、人間のさまざまな能力が収入に結びつくし、その能力は訓練によって向上することも可能ですが、性的魅力というのは、いかに蓼食う虫は好き好きとか言ってもわりと画一的かつ生得的なものです。したがって、自由化によってリスクを低下できるのは「恋愛強者」に限られ、小谷野氏の言うような「恋愛弱者」の恋愛レスリスクは増大する一方になり、それがある種の社会不安定性に結びつく危険があると思うのです。
かといって、性的魅力を金銭と交換することを認めてしまえば売春の合法化になるし、逆に、不倫の自由を認めてしまえば、結婚も合法的売春に過ぎなくなってしまうと思うのですが、これらの点について著者は何も言及しておらず、どうも、部分的自由化、などと言っても絵に書いた餅のような気がします。
実際、最初は単に現代人を表現するレトリックに過ぎなかった「自分の気持ち至上主義」が、著者自身のリストラ体験を告白しているあとがきまで来ると、文字通り (悪い意味での) イデオロギーになってしまっていて、そんな寂しい思いをしてまで貫かなくてはならない「自分の気持ち至上主義」って、なんか矛盾してないか? と感じてしまいました。
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