ウィングフィールド様、ありがとう。昨年7月に79歳で亡くなったあなたは今は天国ですか。遠く離れた日本で、あなたが1995年に英国で刊行した「Haed Frost」をいま、翻訳で読み終わりました。上下合わせて900'nという厚さですが、読み終わったあとは、ああ、終わってもったいない。上・中・下の3巻でもいいという気持ち。創元社さん、早く第5巻「Winter Frost」(1999年)を翻訳してください。
ところで、なぜ、フロスト警部シリーズは面白いんでしょう。第3巻の解説で、推理作家の霞流一氏は、フロスト警部は「メグレ×ドーヴァー」だと書いています。確かに、足をまめに捜査する真面目なメグレ刑事と、おばかで下品なドーヴァー刑事をかけた形ですね。ただ、霞さんも指摘しているように、同じ英国作家コリン・デクスターのモース警部とも似ているところがあると思う。
デクスターはクロスワードパズルの作り手でもあり、彼のミステリーは、推理の「迷彩」が施されている。モース警部が推理を展開するが、その多くは空振りで、失敗しながら真相にせまる。それが、クロスワードパズルの罠のよぬになっていて、主人公の刑事がこう推理するんだから正しいだろうと思うと、裏切られるという、読者を惑わす迷彩になっているのだ。そして、この迷彩は、実は、この事件、こう考えれば、こんな犯人像もあるんだという、複数の回答を提示していることにもなる。ちょうど「毒入りチョコレート事件」のように。
そのモース警部の推理を、フロスト警部は、がむしゃらな足を使った捜査、ひらめき捜査で行う。読者はフロストとともに、現場に行き、容疑者に職務質問をし、ああ、こういうわけかと推理するが、それが何度か裏切られ…という過程を通して、フロストと同時並行的に推理を楽しむのだ。その同時進行、複数推理を複数事件で行う(そういろんな事件が併発するのもフロストシリーズの特徴)それがフロストシリーズの大きな魅力ではないか。
(もちろん、お下劣だが、心はやさしい、一生懸命なフロスト警部のキャラクターの魅力も絶大だが)
この作品は、きっと年末のこのミスなどで、海外ミステリーのベスト3以内には入るんでは。