ウォーターゲート事件を知らなくても十分に楽しめる、質の高いエンターテインメント作品です。
フロストという人物についてはまったく知らず、予備知識ゼロでした。本作で描かれるインタビューは、アメリカでは伝説的らしいですが、そういうことがあった事もまったく知りませんでした。
映画のタイトルは「フロスト×ニクソン」だが、厳密には、互いにブレーン数人を集めての団体戦「フロストチーム×ニクソンチーム」の様相を呈します。文字通り火花を散らすフロストとニクソンに、鋭くも的確な助言(ときに叱咤)をするブレーンたちの様子も面白いです。公式サイトには「ボクシングのタイトルマッチのよう」と宣伝されていますが言い得て妙ですね。
それにしても、ニクソンの攻勢にやられっぱなしのフロストの起死回生の攻撃も含め、二人の応酬は見応えがありました。
フロストには、インタビューを成功させて全米進出する野望が、ニクソンだって政界に返り咲く足がかりを築くため、という打算が。そんな両者の思惑と思惑が交錯する、このインタビューが面白くないはずがありませんよね。
主演のフランク・ランジェラは、79年の「ドラキュラ」で有名ですが、今回のニクソン役ではあまり表情を変えず、口調も落ち着いているのですが、国民に憎まれているニクソン大統領に少し同情させる様な、『ただの悪者』ではない、悲しき1人の年老いた男を好演しています。
マイケル・シーンは「クイーン THE QUEEN」で演じたトニー・ブレア首相が記憶に新しいところですが、演じるデヴィッド・フロストのお茶の間で人気のプレイボーイぶりと、インタビューを実現させるべくフロストがスポンサー集めに東奔西走し、ニクソンへのギャラを自腹で捻出する根性を見せるシークエンスなどは、なかなか見ごたえがありました。