本作には殴り合いも口汚い罵り合いもない。1977年に行われたD・フロストとR・ニクソンの12時間に渡るインタビューを「映画」にしたものだ。ドキュメンタリーを観れば済むものが(特典映像には実際のインタビューシーンも収録)なぜこんなにも緊迫感溢れる傑作となったのか?R・ハワードの演出力も当然あるだろうが、何といってもF・ランジェラとM・シーンの迫真の芝居がその最大要因だろう。「国益のためならば、大統領は非合法なことも出来る」というセリフは、アメリカのみならず現代の中国にも受け継がれているし、OAされていないふたりの電話でのやり取り(チーズバーガーの話から出自のコンプレックスに及ぶあたりは本当に圧巻!)も秀逸だ。21世紀もあっという間に1/10が経過するが、Webやクラウドのおかげで、生活者はマスメディアへの依存度が明らかに減ってきた。本レビューにしたって、それまでは一般人が語ることなんてほとんど出来なかったからね。しかし1977年当時は、まだTVが帝王だった頃だ。映画でも語られているが、ニクソンへのクロースアップと、そこに映る生気のない表情は、国民に全てを理解させる「力」があった。加えてアンカーマンの持つパワーも、今とは比較にならない。2010年現在、100万ドルを賭けて政治家へのインタビューを採るアンカーマンは世界に何人いるだろうか?失敗すれば金銭どころか、一番重要な「地位」も失う「人生の正念場」だ。それらのあらゆる「緊張感」が本作から溢れ出ているので、傑作たり得たのだろう。いわゆる「娯楽作」ではないが、3DだVFXだと浮かれている業界の「原点」が観られる作品なので、多くの人に薦めたい。特典映像には先のインタビュー以外にもメイキングなどが収録されている。星は文句なく5つです。