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フロイト全集〈22〉1938年 モーセという男と一神教・精神分析概説
 
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フロイト全集〈22〉1938年 モーセという男と一神教・精神分析概説 [単行本]

渡辺 哲夫 , 新宮 一成 , 高田 珠樹 , 津田 均
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「MARC」データベースより)

総数270作品を執筆年代順に配列し、思索の核心をなす主要用語の統一、過去の研究を包括した編注により21世紀の新たなフロイト像を提示する全集。第22巻には「精神分析概説」など1938年に執筆された著作を収める。

登録情報

  • 単行本: 326ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2007/5/25)
  • ISBN-10: 4000926829
  • ISBN-13: 978-4000926829
  • 発売日: 2007/5/25
  • 商品の寸法: 22.2 x 15.4 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 597,722位 (本のベストセラーを見る)
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6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
岩波書店から刊行中のフロイト全集です。
これまで人文書院の「フロイト著作集」はありましたが、全集の刊行は本邦初になります。
フロイトの心理学的著作を年代順に網羅して全22巻の構成になっています。主な底本はドイツ語版全集(Gesammelte Werke)ですが、「失語論」など日本語版のみの著作も含まれています。

翻訳の信頼度は著作集に比べると格段に上がっているようですので、これからフロイトを読もうという方は、やはりこちらの全集を読んだ方がよいでしょう。著作集は割引販売などされていてお得にみえますが。
全巻で統一された重要な用語は、著作集などで親しんだものとはかなり変更されており、違和感があります。例えば、欲望(願望)、想い出(記憶)、快原理(快感原則)、リビード(リビドー)などです。(カッコ内が従来の訳語)
脚注や書誌事項は、翻訳者にもよりますが、独語版や英語版全集からの引用が多いです。

本巻は、「モーセという男と一神教」や未完の「精神分析概説」など、フロイトの「遺書」とも言えるような最晩年の著作をおさめており、興味がつきません。「モーセ」は、個人的にはフロイトの著作の中でも一番好きな著作です。同じ翻訳者によるものが先に文庫本でもでており、全集のものは訳語統一の方針に合わせて細かい変更がなされていますがほぼ同じものです。

収録著作
●モーセという男と一神教●「精神分析概説」へのまえがき●精神分析概説●精神分析初歩教程●防衛過程における自我分裂●反ユダヤ主義にひとこと●『タイム・アンド・タイド』女性編集者宛書簡●イスラエル・コーエン宛書簡●イスラエル・ドリュオン著『リュンコイスの新国家―改良された人道的基盤の上に新たな社会秩序を築き上げるためのプラン』への緒言●イスラエル・ドリュオン宛書簡2通抜粋●成果,着想,問題

喪の作業と赦し 久米博
宗教史とその深層 末木文美士
フロイトの「最後の日記 1929〜1939」の紹介 小林司
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形式:単行本
ユダヤ系オーストリア人フロイトの、ユダヤ教の宗教的起源を論じた小論である、多分、西欧のユダヤ人の大半は人種的には、パレスティナに住んでいた、本来のセム系の人種ではなく、7世紀に国家的な一大改宗をした、騎馬民族カザール帝国の住人の末裔である。故に、一般的には、ユダヤ人としているが、本来の人種的には、黒海の北に広がるスラブ系人種の一族であろう。「アシュケナージ」と呼ばれるユダヤ教信奉者の大半は、旧約が伝えるアブラハムの子孫と謂う訳ではない。サルトルはその著書「ユダヤ人とは何か」で、西欧の中に、偏見と差別の歴史としてのユダヤ人を論じたが、国家的改宗をしたカザールにも政治的理由があり、ユダヤ人問題の起源はこの辺にある。フロイトの小論「モーセと一神教」は、ユダヤ人の聖典ーバイブルと、ユダヤ教の成立に起因するモーセという人間と一神教の謎を、正面から論じた印象的な省察であった。

ここでフロイトは、ユダヤ教とユダヤ民族の父とも称せられるモーセの、伝承と旧約の記述から客観的事実を探り、伝説の内に秘められた矛盾の意味を深く分析する。バイブルの記述は、永い時代を通じて注意深く幾多の改竄が為されており、ユダヤ人の深層心理の中に秘められた、願望と現実、欲求と悔悟の意味を、精神分析の手法を駆使して推察する。遠い昔に起こった、エジプトの宗教と賤民に強制された、一神教の伝説と真実は、おそらく、事実と虚構が転倒されて居り、ユダヤ人の無意識の中に込められた願望と非情なる現実を、現在のユダヤ教の原型の中に省察する。伝説として残された物の中に、無意識の衝動、抑圧された過去の隠蔽、恐らく歴史書と謂うものは、取分け、宗教の場合にはそうであろう。ユダヤ教の様な、強圧的な、狂信的な戒律を込めた、旧約全書のような典範には、公式に記述されない重要な核心部、内陣には、おいそれと記述できない、象徴的な物が隠されている。と、フロイトは、考えている様だ。割礼も本来はエジプトの風習であり、永い期間、奴隷としてエジプトに居た間に、それが何らかの理由で定着したものであろう。あるいは、モーセが強制した物であるかも知れない。

古代に於いては、宗教と政治は一つの鏡面構造となっており、過去に起こった記録に無い事実、おぞましきモーセの殺害、それは、バイブルの記述から抹消され、永遠に秘匿されたかに見えても、フロイトが、エスと呼んでいる、根源的性エネルギーの如く、抑圧された願望、秘められたかに見えた真実を、鏡は、丸裸に映し出し、無限の深みを提示する。宗教の起源、特に、一神教の様な、異常な厳格さを持った世界観が、何時、どの様にして成立したのか?イクナートンとは、如何なる人物であったのか?アメンホテプ四世の宗教の規範とは、どの様な綱領を持っていたのか。イクナートンのアトン信仰の賛歌は、旧約の中に酷似するものがあり、それは詩篇の中に採用されており、旧約全書は、古代エジプト18王朝の記録が収録されている。

恐らく、旧約全書の多くの記述の源泉としてエジプトの歴史、風俗、伝承が、雛型となって潜んであると思われる。さて、文化的に遅れた、セム族の奴隷を引き連れて、テルエル・アマルナを脱出した、オンの一神教神官団、その指導者と目されるモーセは、如何なる人物であったのか?イクナートン治世の高官であったのか?イクナートンと、血縁上極めて近い人物であった可能性もあるが、根本的な疑問として、一体、一神教は誰が、何ゆえに、信奉し出したのか?
イクナートンに、一神教を吹き込んだ人物が居るのではないか?という、推測である。仮にこの謎の人物をΩとしよう、このΩには、何人かの弟子が居た。或いは、このΩは、秘密の教団を持って居たかも知れない。それは、多神教の神官団とは、根本的に対立するものだ。多神教の神官団に多大な政治的圧力を受けていたイクナートンは、一神教の神官団を選択した。イクナートンの治世には、このΩは、影響力を行使できたが、アトン信仰は、その死と共に滅ぼされ掛かった。ゆえに、エジプトを脱出する以外に、宗教的に生き延びる道は無かったのだ。

フロイトの晩年の宗教論、「モーセと一神教」「精神分析学概説」は、他の文化論と共に、精神分析の症例や技法とは、また異なった、興味深い論考である。遙か遠い昔に起こった事実、その歴史的記述の裏に隠匿された事実を暴く、一つの例として、各国の歴史、宗教、を考察する上で、また、イクナートン時代のエジプト文明を考察する上で、無二の参考論文の一つであろう。
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形式:単行本
 1939年に発表されたフロイトの宗教論・文化論についての論文である。精
神分析は神経症の治療技法として創出されたが、人間理解の方法として宗教
や文化の解釈と再構成にも利用されることがある。本論文はその一つである。

 本書は精神分析的な視点からユダヤ教の成立史やモーセの出エジプトにつ
いて論じている。着想は独特であるが、現代的な歴史学や宗教学からは「事
実に即していない」ということであまり取り上げられることは少ないようで
ある。僕も詳しくないが、多分フロイトの言っていることは「歴史的事実」
としては間違っているのだろうとは思う。

 しかし、本書を単なる歴史書や宗教書として見ると、その価値はあまりな
いように思うが、視点を変えて臨床のモチーフやメタファーとしてみるとま
た違った色合いが見えてくるように思う。

 例えば、「モーセ、ひとりのエジプト人」や「もしもモーセがひとりのエ
ジプト人であったとするならば・・・」などの章では、モーセの名の由来や
出生についての探索が行われている。これは臨床の中で言えば、治療者が患
者の生育歴や早期外傷体験の探索・想起などを行っているところが目に浮か
んでくる。患者の語られる材料をもとに、自由連想を駆使し、一つ一つ確か
めていく。これはきわめて臨床的なことである。

 また、モーセという人物を実在のものとせず、心的内容物のある象徴とし
て見て、ユダヤ教をスクリーンとして、そこに一人の人間の無意識や乳幼児
体験を写しだすことができているように思える。宗教における戒律や取り決
めは個人の超自我に当たるだろ。

 すなわち、フロイトはモーセやユダヤ教の分析を行っているように見えて
、それはメタファーとしてフロイトの臨床や分析技法を書き記していると理
解することができる。本書を歴史書として見るか、臨床を記述している書と
して見るかで、かなり大きく異なってくるだろうと思われる。
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