タイトルこそフロイトの名前が挙げられていますが、全体を通してはフロイト心理学を起点とした「(にわか)精神分析学」や「通俗心理学(確かこの言葉は菊池聡氏の著書で知りました)」に対する批判的意見をまとめたものです。
フロイトそのものの批判はカール・セーガンなどが反証可能性を検証する等詳しい批判をしていた記憶があります。
内容も著者の独自研究ではなく、主に心理学界で発表された論文や実験を元にそれを紹介するという構成になっており、心理学を知る本というよりはジャーナリズム的ルポライトという印象があります。
とにかく社会一般に流布されている通俗心理学に対する批判的意見を取り上げ、それを“きめつけ”により針小棒大に書いているように見えました。特に教育とマスメディアについて取り上げた章では『教育やマスメディアが人に影響を与えるという論証は一つも存在しない』というようなニュアンスで書かれ、あまりにも表現大袈裟過ぎると個人的には思いました。
また、それらの調査や実験に対して『この実験を行った人物は○○という結論に至っているが、この実験結果が××という事を証明してるのは明白である』という、それらの仮説を否定したいという動機からのダブルスタンダードが多く見受けられ非常に公平性を欠いた文章になっています。
また、心理学を少しでも知る人間になら常識的と言えるような部分が非常に多いです。
しかし、この書籍から価値を見出す事もできます。
一つは心理学者の菊池聡氏も主張しているように、世の中に蔓延る『心理学は何の根拠もなくでっち上げられたいかがわしい学問だ』という「通俗心理学」と学術的な裏付けのある心理学を混同しているあまり心理学に興味のない方にとっては、実際心理学ではどんな事が行われいるか具体的に把握でき、「通俗心理学」が学問を騙った都合の良い俗説の流布に過ぎないと言う事を知る事ができると思います。
もう一つは心理学者や特定の心理学の現象を名前を挙げ取り扱っているので、そこから関連書籍を探し出し、(いわばこの本の元ネタになった)研究などについて調べるのに非常に便利です。実際自分はエリザベス・ロスタフの「抑圧された記憶の神話」という良書に出会いました。
心理学について興味を持つための入門書。
心理学の特定の研究を知り、それについて調べるための目録。
という点においてはそれなりの価値があるというのが個人的な感想です。
そして、この本からは色々な意味において、「特定の主張を盲信する事の危険性」が学べると思います