当初は様々な表情を見せていた若者達が、訓練所を卒業する直前には皆一様の顔をもつ兵士になってゆく。
本作は、海兵隊史上もっとも規律が厳しかったと言われる、ベトナム戦争時代の海兵隊員の訓練と戦地での様子を、二部構成で描いた作品です。
ラストの熾烈な意外性や、感情表現を抑えて描写に徹底することで逆に戦場の恐ろしさを見せるやり方等、後半は確かにすごいです。
ただ、この映画の優れた特徴は、むしろ地味な前半部分にあると思います。
いわゆる「普通の」戦争映画なら、冒頭のバリカンシーンは入れないでしょう。
頭を刈るのは現在の海兵隊でも当たり前のことですし、それよりも登場する兵士の生い立ちや生活を、いかにも平穏そうに見せるのが王道だと思います。
しかし、キューブリックが鋭いのは、あの冒頭を通して、戦争という特異な状況がいかにして知らない間にセットアップされるのか、を見せているという点だと思います。
前半で重要なメッセージをサラっと流してみせた『フルメタル・ジャケット』は、一昔前の話しでもどこか遠い国で起きている事でもなく、実は今の日本それ自体が、既に戦前であると静かに思わせる内容でした。