画面サイズが2.35:1との事。
これはいわゆるシネスコサイズという事なのでしょう。
しかし、この作品(「時計仕掛け」や「シャイニング」等も同様)、DVDではスタンダード収録でした。
というのは、これらの作品はスタンダードサイズで撮影し、上映時に上下の黒マスクで画面をトリミングして擬似シネスコや擬似ビスタにしていた(興行上、大画面の方が好まれるという理由で)というのです。
そのため、ビデオ(DVD)化に際してはノートリミングのスタンダード収録をキューブリック自らが望んだというのです。これこそが本来の形だということなのでしょう。
ところが、今回はシネスコ収録だとの事。これはキューブリックの意思に反しているのではないでしょうか。とは言うものの複雑な心境にかられます。
その複雑な心境というのは、キューブリックの意図に反していようと、劇場公開のシネスコ版を歓迎する気持ちが私自身大きいからです。
現在では、随分と普及した横長の大型画面のテレビでスタンダードを再生すると、左右の空白が出来、画面そのものの大きさが小さくなり、従来のテレビのように画面一杯に再生することが出来ません。
キューブリックがビデオ化に際してスタンダードを望んだのは、スタンダードが本来の形だからと言うのではなくて、テレビがスタンダードサイズが主流の頃だった事を考慮して、その画面をいっぱいにして見れるようにという配慮だったのかもしれません。
キューブリック亡きあと、ことの真相は薮の中、憶測の域にすぎないのですが…。
願わくば、スタンダードサイズとシネスコの双方を収録して頂けると良かったのかもしれません。
作品そのものは間違いなく星5つです。
国家や思想などの頸城から離れ、ヒューマニズムや大義を一切排し、戦争の愚かさ、戦争をしてしまう人間いうものを
冷徹なまでに突き放して描いた特筆すべき一本です。
その突き放し方の徹底が感情移入を許さず、カタルシスは皆無。
人間はどんな残酷なシーンでも、描き方一つで、それがカタルシスに繋がってしまいます。戦争の悲惨さを描きつつ、暴力描写にカタルシスを感じさせてしまいかねないのです(地獄の黙示録のワルキューレの騎行をバックに殺戮するシーンなど)。キューブリックは慎重さをもって戦争映画からカタルシスを排除する事に成功しました。その凄さをジックリ楽しんで頂きたい。
感情移入が出来ない事。カタルシスが無い事が、この作品の褒め言葉なのです。