「金融システムの失敗は、経済システム全般の失敗の象徴であり、経済システムの失敗は、根深い社会問題の存在を示唆しているのだ」。
2008年にアメリカで発生した世界金融危機の原因を徹底追及し、今後の世界経済のあり方について論じている本。著者はノーベル賞受賞の経済学者。
前半はサブプライムローン問題に端を発した今回の金融危機の徹底分析。FRB、銀行、そしてアメリカ政府を、これでもかこれでもかと、例を挙げながら批判している。規制緩和が銀行経営に対して収益拡大のために突っ走る方向へ舵を切る誤ったインセンティブを生んだこと。献金を通じた議会と金融業界の癒着。ウォール街クラブのメンバーを優先した救済策。手数料収入に目がくらみデリバティブ商品の多くが都合のいい前提で計算されて運用されていた。独禁法の空洞化。大きすぎて潰せなくなった銀行は大きすぎて管理のいきわたらない組織になってしまっている。相変わらず高い役員報酬。「アメリカの金融システムは、貧しい人々を搾取する方法はすぐに考えついたが、貧しい人々の役に立つ方法を考案する能力はなかった」と手厳しい。
後半では、世界経済やIMFの役割、さらには経済学理論全体にまで範囲を広げ、ミルトン・フリードマンの新自由主義や、効率化市場仮説についての反論に頁を費やしている。「国家の役割を小さくしようという見当違いの試みは、(政府の多額の公的資金投入で)ニューディール政策の時代でさえ予想もつかなかったほど、政府が大きな役割を果たすという結果をもたらした」というのは皮肉が利いている。
気持ちいいくらい主張は一貫していて明快だ。政府は間違うことがあるが、市場もまた間違うものだと主張。政府主導に偏りすぎるのも市場主導に偏りすぎるのも適切ではなく、両者のバランスをとって規制と透明性を確保した仕組みを築くことが重要。そして、今回の危機は新しい金融システムを生むための機会でもあり、これをつかみ損ねてはならないと強調している。
ただ、特に前半部分はちょっと冗長に思われる。また、既に少し古い本なので、その後発生したヨーロッパ通貨危機については触れられていない。