本書は、若者がフリーターないしはニートに陥りやすい要因を解明するために、主に「学校から就業へ」という時期に、その移行がスムーズに行われないことを多くの実例と主に雇用政策の観点から明らかにしたものである。
この「移行」に着目する上で、手法面においても実証的かつ精緻なものと評価できる。まず、本書では全体的な統計を取り上げた上で、特に学歴の低い者が30歳を超えても依然ニートである、といったような姿を明らかにした後、属性などの情報を明らかにした、調査対象者からのインタビューをもとに類型化して解説している。
そして、主に「学校の支援」と「家庭環境」の両側面から、前者については、学校の就職支援が必ずしも十分ではない点を指摘している。後者については、そもそも親の就労形態に問題があり、その必然的結果としての不安定雇用ないしは無業、ないしは、親が高学歴の場合における無目的な進学と目標の喪失による無業といった点を明らかにしている。こうした側面を実証的に明らかにした本書は、例えば『希望格差社会』に見られるような、安直で方法論的に極めて問題のある「階層格差煽動論」とは本質的に違っている。
しかし、本書の問題意識はあくまでも「雇用政策」の側面からであり、この点においては限界性もあり、このことは著者も認めていることである。ひとつに、学校とはあくまでも教育・研究機関であり、雇用促進機関ではなく、社会人としての基礎的な知力の増進を行うところであることから、そこにおいて過度な期待を行うことは無理であろう。また、無業者問題についても、「そもそもなぜ無業が可能なのか」という点について、税制、社会保障政策との関連で総合的に考察しなければならないことであることは紛れもない事実であろう。
ただ、問題意識と分析視角を明らかにし、方法論的にも精緻である本書の意義は、「階層格差煽動論」とは比較の対象とすらならないものである。