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この作品を説明する前に、東作品の話をします。
東直己の作品には先ず札幌を舞台にした、便利屋シリーズがあります。これはふだんは違法賭博なんかで暮らしている便利屋の「俺」が依頼を受け、事件を解決していくシリーズですが、主人公も脇を固めるキャラクターにもどこか面白みがあり、一見軽そうですが、その奥には熱く切ないものがあり、そこが良いです。
もう1つは探偵畝原シリーズ。これも舞台は札幌です。新聞記者でしたがヤクザに嵌められ、記者を辞め今では娘と二人で暮らしている畝原が主人公です。
こちらはかなり正当なハードボイルドです。
実は氏の作品はほぼ札幌が舞台なんです。そして、それまでの作品で作り上げられた札幌ワールド(東ワールド)がそのまま『フリージア』に使われています。勿論本作から読んでもかまいませんが、各シリーズを読めば面白さも倍増ということで。
都会的だけど、地方性(地方の実力者とかが多い)も備えた、曖昧模糊とした都市として描かれる札幌は魅力的です。一度は行ってみたいです。本作に出てくる、橘連合菊志会川村一家丘上組桐原組長・桐原満夫(俳号宗緑)や彼の片腕の相田は、他のシリーズにも出てきます。
話を元に戻します。
しかし健三は多恵子を守るためにヤクザと戦っていきます。彼女に危害を加えようとするものを躊躇なく殺していきます・・・。
シリアスでハード。便利屋シリーズなどではオブラードに包まれた、作者の芯の部分がこの作品にはよく現れています。
チンピラ・ダメ人間の描写がとても上手いです。北海道弁がその効果をあげる一端を担っています。
そんなヒットマン型の殺人機械のごとき主人公を登場させたのが、軽ハードボイルドと呼ばれるススキノ探偵シリーズの作者、東直己である。ちなみにぼくはあのシリーズを「軽」とは呼ばない。そこらのハードボイルドが束になっても勝てないほどの確かな小説構築力を持っているのがこの東直己という不良作家なのである。
東直己は2001年に『残光』で推理作家協会賞を受賞しているが、その名作『残光』は実を言うとススキノ探偵シリーズの外伝であり、この『フリージア』の続編だ。つまりシリーズにこだわらねば気が済まない読者が、傑作『残光』に辿り着くためには、この『フリージア』とススキノ探偵シリーズを読んでおかねばならないということだ。あちらのシリーズのオールスターキャストを従えて、本書のヒットマン榊原健三が戦う話であるからだ。
山奥で暮らし、木彫りの梟を彫っている隠遁生活から、ある女性の命を守るためにススキノに戻ってくるヒットマン。抗争。血の雨。修羅場に継ぐ修羅場。息を抜けぬアクションの連続。<動>の小説である。紛れもない一級の娯楽小説である。東直己ワールドをゆくのに、避けて通ることのできない一冊でもある。
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