公開当時は既に少し人気に陰りを見せたアラン・ドロンの主演作ということだったが、監督がジャン・ポール・ベルモンドとアラン・ドロンを配した傑作「ボルサリーノ」のジャック・ドレーだからファンの期待は大きかった。その期待に応えて、作品としては地味ながらも作りが丁寧であったことから評価は高かった。
そんな作品を今一度観直すとやっぱり、「うーん」と唸ってしまうぐらいの重み(実録物であるからか)があり、昨今の軽いのりの作品と比べるとはるかに観応えのある作品だった。
なかでもなんといっても、凶悪犯ビュイッソンを演じたジャン・ルイ・トランティニアンのイカレっぷりと存在感の大きさが素晴らしかった(悪役としては「白熱」のジェームズ・ギャグニーに匹敵する)。トランティニアンはアラン・ドロンを完全に喰っていると思う。
そして、もう一つの魅力はドロンの恋人役を演じるクロディーヌ・オージェ。トランティニアンを逮捕する場にかかわるシーンでトランティニアンがピアノを弾くオージェに惹かれるところは、彼女の妖しく艶やかな魅力が120%出ている。「007/サンダーボール作戦」の時の彼女以上に魅力的だった。
もちろん、ドロン演じる刑事とトランティニアンとの駆け引きもリアルで観応えがある内容に仕上がっているが、役者としてはトランティニアンとオージェの2人のほうが上手だったようだ。とはいえ、ドロンの後期(?)の作品としては素晴らしい出来の作品であることは間違いない。
ジャック・ドレー監督はドロンと組んで同じロジェ・ボルニッシュ原作の「友よ静かに死ね」を撮っているが内容は本作の方がはるかに上だろう。