「バルタザールどこへ行く」というロベール・ブレッソンの映画タイトルをもじってつけられた「フランス映画どこへ行く」という題名を見るだけで、誰もが著者のお洒落なセンスとフランス映画への深い愛情を感じ取ることができるでしょう。
それにも増して驚いたのは、ここに書かれていたおフランス映画と、かつての映像大国の心も凍るような厳しさです。この国の最近の興行ベストテンはことごとくアホ馬鹿コメディ映画で占められ、ヌーヴェルヴァーグの衣鉢を継ぐ清く正しく美しい芸術映画は、継承者の悪しき作家主義の弊害もあって大衆から見捨てられ、ハリウッドもどきの空疎な商業映画だけが大量生産されているというのですから、ちょっとした驚きです。
この国ではフランス映画の伝統を死守せよ、と国策でテレビ局が映画製作に資金援助しているらしいのですが、彼らはもうかりそうな似非聖林大作映画の投資に走り、結局新しい映像表現に挑もうとする独立系のプロデューサーや監督、脚本家たちが食うや食わずの生き地獄でのたうちまわっているというのです。
パリ在住12年超の著者が、代表的な映画監督、プロデューサー、批評家、教育機関、業界関係者からの綿密な取材やインタビューに基づいて書き上げたこの記念碑的な労作は、現代フランス映画事情のエンサイクロペデイアであると同時に、フランス映画の栄光をどうしても復活させたいと願う著者の熱情がひしひしと伝わって来る「夢と希望の書」でもあります。