本書は、フランス文学「案内」と銘打たれているとおり、けっして、詳しく緻密で非の打ち所がない「文学史」が書かれているとは言えません。それは、渡辺一夫・鈴木力衛両先生も、「まえがき」「概観」にて仰っています。
では、どのような人に向けて書かれたか。「あとがき」にて渡辺先生は、「この文学案内は、フランス文学の専門研究をしておられるかたがたのために書かれたものではありません。とかく誤解曲解され易いフランス文学とその背後にあるフランス文化とを、なるべく多くの日本人にわかってもらいたいという念願で、この案内書は綴られ」たのだと、その執筆意図を示しておられます。
一人の作家について、長くても半ページ〜3ページくらい、短ければわずか数行ほど取り上げられているに過ぎず、あるいは16世紀以前(11〜15世紀)は「中世期」としてひとくくりにされ、かなり短い記述に終わっているので、個別の作家について、あるいは個別の作品について、まとまったことが詳しく知りたい!という方には、本書は不向きかも知れません。
そんな本書の効能は、どこにあるのか。それは、フランス文学を【人間に関する連続講演】【人間の赤裸の姿を、人間世界の種々相を知るよすが】と定義し、その視点を貫きつつ、どういう「人間」(=作家)が、どういう「人間」(=作品)を書いたか、各時代の「人間模様」の概略をふまえながら、短いながらも的を得た情報を連続的に記載している点にあるだろうと思います。
簡単に言えば、「変な人、真面目な人、明るい人、暗い人、いろんな人がいるなあ」というふうに、興味深く「フランス人たち」を眺めているうちに、こんな人はそりゃあこんな本を書くはずだよなあ、難しそうに思っていたけど「フランス文学」ってじつはけっこう面白いものなんじゃないかな、と気づかせてくれるところ、全編を通じてフランス文学の「魅力」をやさしく丁寧に語ってくれているところ(本書の文章は、全編話し言葉、敬語調で、まったく堅苦しくありません。)に、本書の意義があると思います。ぼくも、高校生の頃にこの本を読んで、まったく触れたことがなかったフランス文学にすごく興味を持ちました。最初の一歩を踏み出すために、本書のような「導き」は、大きな意味を持つのかも知れません。
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参考までに目次を記載。
・まえがき
・概観
一.中世期(24〜50ページ)
二.十六世紀(51〜76ページ)
三.十七世紀(77〜99ページ)
四.十八世紀(100〜132ページ)
五.十九世紀(133〜214ページ)
六.二十世紀
第一期 (216〜228ページ)
第二期 (229〜247ページ)
第三期 (248〜277ページ)
・あとがき (渡辺一夫先生)
・増補について (大久保輝臣先生)
・索引