本書は「フランスの歴史の興味をもち、その知識を広め理解を深めたいと望んでいる人たちのための研究ガイド」である。
本書は、総説、第一部(研究サーヴェイ)、第二部(参考文献)からなる。
第一部第1章〜第7章は、古代から現代まで時代別に論じる。第8章〜第10章は、テーマ別に論じており、「文化史」、「ブルターニュとアルザス」、「フランスとヨーロッパ統合」を取り上げている。
以下、簡単な批評。
・ 総論において本書は、フランスという「ローカルな枠組みの意義」を強調し、フランス史学の意義として、1)古代ローマ帝国との歴史的連関、2)フランク王国、3)封建社会論、4)アンシャン・レジーム論、5)フランス革命、6)国民国家論、7)EU、8)歴史認識の方法論、というトピックを取り上げる。これらのトピックが、フランス史において重要である点に異論はない。しかしだからといって、必ずしも現代社会にとって意義があるとはいえないのではないか。フランク王国が「国家」か否かという議論の答えは、直接的にわれわれに関係はないといってよいのではないのか。もちろん、フランク王国の歴史研究によって「国家」概念が鍛えられ、中世世界全体の歴史分析に貢献したり、近代以降の国家概念との連関などが議論されたりすることはあるだろう。しかしこの場合、影響は二次的なものである。フランス語、あるいは英語で研究成果を世界に発信するならともかく、日本語で日本人相手に研究発表する場合、はたして「矮小な枠組みでの歴史的考察」にどれほどの意味があるのか。
・ グローバル化する現代において、我々に要請されているのは、矮小な枠組みでは捉えきれない比較や関係の視座ではないだろうか。それゆえ、植民地帝国史や移民史、あるいはジェンダー研究に関する言及が少ないのは残念に思えた。他方、
イギリス史研究入門では、「帝国」の章が設けられている。
アメリカ史研究入門では、「人種」、「ジェンダー」、「宗教」が取り上げられている。これらと比較するとやや物足りなく感じられる。もちろん、単純な現在主義に陥るわけにはいかないが。
・ とはいえ、「ブルターニュとアルザス」、「フランスとヨーロッパ統合」などの章は非常に有益であるし、時代別の各章も目新しさは無いが、簡潔にまとめられており、十二分に役立つ。
西洋近現代史研究入門や
西洋中世史研究入門などと併せて利用するとよいかもしれない。