サイモン&ガーファンクルの「ソー・ロング、フランク・ロイド・ライト」は、美しいメロディーときれいなハーモニーの切ない曲で、私はこれまでその建築家に対して優しい想いを抱いてきました。でももう、そんな先入観は拭い去りました。彼は天才を公言して憚らない豪放な人柄で、その生い立ちや女性関係、私生活での血塗られた事件を含め、劇的な生涯を送った芸術家でした。
この作品は、彼の孫や建築の弟子、評伝作家などの証言を交えながら、フランク・ロイド・ライトの長い一生のドラマを、分かりやすくコンパクトに伝えてくれると思います。彼の建築作品の魅力を探求したい方には物足りないかもしれませんが、このようなドキュメンタリー作品の中ではクォリティの高い部類に入ると感じられ、観て損は無いと思います。'00年にジャズの歴史を18時間に描いて評判となったケン・バーンズの名前を製作クレジットに見つけ、なるほどと思いました。
驚いたのは、約一時間ずつの2部構成のうち、第一部が終わった時点ですでに彼の年齢が60歳を越えていたこと。通常の人生では、ここまでで終息に向かって当然でしょう。帝国ホテル東京や自邸タリアセンに見られるとおり、過度な装飾を避けた垂直水平基調の外観と、インテリアのお馴染みの格子状モチーフが、互いに響き合い調和するクラシカルな音楽のような効果を醸し出し、その建築スタイルは十分確立されているのです。
第二部では、近代的な高層ビル群の建設ラッシュから一旦忘れ去られた彼が不死鳥のごとく蘇り、彼を過去の建築家として葬り去った欧州のモダン建築家から、逆に養分を吸収したかのような底知れぬ創作活動を展開して感動的です。落水荘、ジョンソンワックス本社、グッゲンハイム美術館など、これが第一部と同一人物の設計かと思えるほど。建築の近代化、現代化をまたいだ歴史にそれぞれ傑作を残した巨人ということを思い知らされました。